皮膚は表皮・真皮・皮下脂肪の3層構造よりなる。けがややけどなどの外傷で真皮より深い傷は何かしらの傷跡を残す。創傷治癒過程に感染などを併発したり、異物が介在することで治癒が遷延した場合、傷跡が盛り上がる肥厚性瘢痕を来すことがある。体質によっては傷跡が傷の範囲を超えて広がるケロイドもある。
傷跡の治療にはトラニラストの内服、ヘパリン類似物質の外用、ケナコルト注射や圧迫テーピングなどが一般的に行われている。最近ではレーザーで傷跡を消せると謳っているクリニックもあるが、残念ながら傷跡はゼロにすることはできない。21世紀のこの時代だから傷跡くらい消せてもよいのにと思われるかもしれないが、傷跡の研究は非常に難しい。人体への影響を調べる臨床研究の前に動物実験があるのだが、実は動物は傷を負っても醜悪な傷跡を残すことがほとんどない。特にケロイドを有する実験動物モデルの作成には多くの研究者が難渋している。昨今の傷跡治療が未だに決定打に欠く理由として人の傷跡に近い動物実験モデルの作成が難しい背景があるからと思われる。
傷跡をゼロにすることはできないが、形成外科医は瘢痕形成術(Z形成、W形成など)により目立たない傷跡に置き換えることはできるかもしれない。