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執筆者の写真林院長

バベルの塔


旧約聖書の「創世記」に記されている『バベルの塔』の話は様々な解釈がある。時代背景がノアの箱舟の話以降ということもあり、人々は洪水・浸水に負けないために神への挑戦や復讐をもってバベルの塔を建築したところ、冒涜とみなした神によって塔は破壊されたという話しの解釈がある。それ以外の話の解釈に、言語が一つであると人々は調和を保ち神が恐れるような高い塔をも建設するので、神は言語を一つでなく様々な異のものとすることで人々の調和を乱して、塔の建設を中断させたという解釈もある。

ブリューゲルが描いた『バベルの塔』は後者の話をもとに現したものだろう。ブリューゲルはミクロの世界をユーモラスに描ける技巧派の画家である。故に、彼の絵は細部から細部まで忠実に描かれていることが特徴と言える。

『困ったわねえ。老眼鏡を忘れてしまったからなんだかよくわからないわ。』

とブリューゲルの絵を目の前にして困り果てる老女をブリューゲルのバベル展ではよく見かける。老視がまだはじまってない人でさえ双眼鏡を片手にブリューゲルの絵を鑑賞するくらいだから、お年寄りには優しくない絵画と言えよう。ただ、彼の描いた『バベルの塔』を目の前にすれば、誰しもが細部が見えずともその迫力は感じとれるであろう。

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