帰宅の途にいつも利用している電車に乗った。すると、車内には大柄の黒人二人が一つ席を空けて隣同士に座っていた。なぜ隣同士に座らず一つ席を空けているのかというと、察するにおそらく互いに体が大きい為、広く座りたいのだろう。この時間帯の車内は仕事終わりの会社員などでラッシュまでではないが割と混んでいる。黒人二人の間の席が空いていることはその場の近くにいる者ならば周知と思われるが、日本人の性で異国の人に対する遠慮から座ろうとする者はいなかった。確かに異国の人でなくともあれほどレスラーのような屈強な体格をした男二人の間に割って座るのは誰しもが遠慮願いたいのだろうか。しかしながら、普段以上に疲れを感じていた私は、その状況は理解しつつもその席に座ることにした。それにしても人種が違えば同じ人でも体のつくりはこうも違うものだと感心するほど彼らの四肢は丸太のように太く、それに比べて私のはまるで小枝だ。彼らは私を隔ててもお構いなく談笑していた。英語が母国語のようであるが、残念ながら話の内容はつかめない。はたから見れば、私のこの状況はあたかも捕獲された宇宙人かもしれない。ただ、私はいささか窮屈ではあるが、この状況を屈強なボディーガードを従えたセレブ気分のように味わっていた。