今年は福岡で第61回日本形成外科学会総会・学術集会が行われた。後天性眼瞼下垂術後のリカバリーに関するお話が大変興味深かった。眼瞼挙筋という筋肉が作用することで我々は開瞼することができる。眼瞼挙筋腱膜の下にある瞼板に停止するミュラー筋もまた上眼瞼の挙上に寄与する。後天性の眼瞼下垂は、挙筋腱膜が伸びてしまっているのでこれらの筋肉が収縮しても上眼瞼が十分に挙上できない状況にある。そこで、様々な手術方法があるが、一般的に伸びてしまった挙筋腱膜を前転させる方法やミュラー筋をタッキング(短絡)する方法などがある。形成外科医は前者の方法を主に行っているが、眼科医は後者の方法を行う施設が多い。近年の報告では眼瞼下垂術後の眼瞼痙攣はミュラー筋のひきつれが原因と考えられている。ミュラー筋がひきつれたりすると強い収縮が起こり、大脳にある青斑核を刺激してしかめ面筋(鄒眉筋・鼻根筋)が同調する為、痙攣が起きるらしい。まだ、諸説の段階ではあるが興味深い意見である。このような眼瞼痙攣はひきつれたミュラー筋を切除すると軽快することから、眼瞼下垂術後の眼瞼痙攣はミュラー筋のひきつれが原因とされる意見が有力視されている。しかしながら、これまで多くの眼科医がミュラー筋のタッキングを行っていたにもかかわらず、眼瞼下垂術後の眼瞼痙攣の報告があまりないことがいささか疑問である。兎にも角にも現状はミュラー筋のひきつれを起こさないように眼瞼下垂の手術を行うことが善処といえるのだろう。