学校の教育だけでは不十分なのだろうか。
都内では小学生にもなれば中学受験を念頭に置いた塾通いが当たり前のような風潮がある。区にもよるだろうが、クラスの半数近くが中学受験をすると聞いたことがある。周りの子が塾に通っているとなればうちの子もとなるのが親心なのだろう。私は都心から離れた郊外で学童期を過ごした。そんな郊外の田舎町でも小学生から塾通いをするお友達が疎らにいたと記憶している。友達の塾通いに感化されたのか、あるいは、親に通うように諭されたのか動機がいまいちはっきり覚えていないが、某大手学習塾に入塾を申し込んだ。一人で通うのも心もとないと思い、親しい友人を誘って入塾に際した現状の学力を推し量るための試験を受けた。未だに信じてもらえない話ではあるが、某大手学習塾から入塾を拒否する旨の結果が伝えられた。その大手学習塾はそこまで敷居の高い印象ではなかったため、この結果にさぞや両親は我が子を心配しただろうに。せめてもの救いは一緒に試験を受けた友人も不合格であったことくらいだ。それでも頭の弱い自分に気づき、人生ではじめて苦渋というものを味わった。いつしか私はこの不名誉な思い出を記憶の片隅に置くようにしていた。つい先日、その友人と食事をする機会があった。互いに一家の主として立派になったと認識しあう中、互いに入塾を断られるくらい不出来であった時の思い出で談笑した。友人も私もあの頃の挫折した気持ちをよく覚えているものだと改めて感じた。