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執筆者の写真林院長

登山


 西東京にある御嶽から大岳山の頂を目指し、大岳山の頂から尾根伝いに鋸山の頂を経由し、奥多摩駅を目指した。この行程は登山届を提出した先のレンジャーの方に心配されるほどの厳しい行程であった。

 大岳山の山頂までの道中、グループ内で時折撮られた写真には笑顔が見られていたが、次第にその笑顔も失われて顔色からも疲労が感じられるように移り変わっていった。鋸山を下山する頃には持参した水もつき、レンジャーの忠告を聞いていればとの後悔の念を抱くようになった。

 ようやく奥多摩の宿場町を見下ろせるところまで来たとき、アスファルトで舗装された道で集落の中を経由するルートと愛宕山を越えて行くルートの分岐点があらわれた。少しの段差でも笑った膝が苦痛で顔を歪ませるほどになっていた私には、少し遠回りになるが舗装されたアスファルトが低反発のマットレスの上を歩くように心地の良いものに映った。ここから愛宕山を越えることがいくら近道といえど、折れた心で損得を計算することなど到底無理であった。グループの若者のほとんどがアスファルトで舗装された道に導かれる中、グループの年輩者が呟いた。

『近いならこっちかな。』

 その視線の先は愛宕山の頂を見ていた。年輩者の長い人生経験で培われた精神力に感嘆した。全行程に約8時間かかったが、無事登山を終えることができた。山登りは体力より精神力なり。

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