神保町といえば、およそ190店の本屋が集まる本の街である。靖国通りとすずらん通りは本屋が通りの両側に軒を並べている。本好きにはたまらない街だろう。本好きでない私は、本を物色することなく、隣接する本屋をみては、『互いの本屋の主人は仲がいい訳がないだろう。』『これだけ競合相手がいると店を続けるのも大変だろう。』と要らぬ心配や妄想を膨らませながら通りを散策していた。
すると、『えっ、あの本売れちゃったの?先週まであったのに。』と店主に嘆くおじさんがいた。どうやらおじさんが前々から欲がっていた古書が、売れてしまったらしい。古書はいわゆる中古本なのに、絶版してなかなか手に入れることのできない希少ものになると当時の価格以上で取引される。そのおじさんは、どうも本のコレクターらしく、その本を手に入れるために小遣いを貯めていたようである。これだけ本屋が集まれば、他所の本屋ではなかなか手に入らない古書、ユニークな本や専門書があるようである。30年前の週間少年ジャンプも古書扱いで当時の価格以上で販売されていた。小学生の時にベッドのなかたった私は、友人と一緒に数年分のジャンプを使ってベッドの土台を拵えたことがある。今でも通称ジャンプ台を寝床として使っていれば、さぞかし豪華なベッドが買えただろうに。