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執筆者の写真林院長

トンズランス感染症


『先生、最近、頭がやたらと痒いけど、タムシじゃないかなぁ。』 この青年は、レスリングをやっており、過去にも体部白癬の既往があった。 『じゃあ、検鏡して見ましょう。』 頭皮は目立った発疹はなく、鱗屑が少し目立った。鱗屑を採取し、検鏡してみた。採取した場所が悪かったのか検鏡では分からなかった。近年、新種の真菌がレスリングや柔道などのコンタクトスポーツで、流行していると耳にした。念のため、ブラシ培養を提出した。後日、トンズランス感染症の培養結果が得られた。この新種の真菌は海外選手から持ち込まれたようで、感染力が兎に角強く、外用剤はほとんど効かないらしい。  微生物において真菌が最も人に近い構造を持つので、人体に影響なく真菌を退治することがただでさえ難しいという制約がある中で開発された現存する治療薬は、どれもある程度の治療期間を要する。本邦の白癬菌は感染力が弱いのが此れ幸いしていたのだが、この新種は近い将来家庭内感染として蔓延するかもしれない。真菌感染は自覚症状が乏しく、無症候キャリアも多いだろう。ドーピング検査も大切と思われるが、レスリングや柔道などのコンタクトスポーツでは大会毎にブラシ培養検査も実施すべきではないだろうか。

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